大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和54年(行コ)68号 判決 1980年6月10日

東大阪市稲田一〇九番地の二

控訴人

濱口工業株式会社

右代表者代表取締役

濱口今雄

同市高井田一四九四番地

控訴人

濱口今雄

右両名訴訟代理人弁護士

葛井重雄

葛井久雄

同市永和二丁目三番八号

被控訴人

東大阪税務署長

松村勝彦

右指定代理人

坂本由紀子

安居邦夫

奥山茂樹

杉山幸雄

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

一、控訴人らは、「原判決を取消す。被控訴人が控訴人濱口工業株式会社(控訴人会社という。)に対し昭和五〇年八月三〇日付でした昭和四八年分法人税についての更正処分及び重加算税賦課決定処分並びに昭和四八年一二月分源泉徴収にかかる所得税についての納税告知処分及び不納付加算税賦課決定処分を取消す。被控訴人が控訴人濱口今雄雄(控訴人濱口いう。)に対し昭和五〇年九月四日付でした昭和四八年分所得税についての更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、主文同旨の判決を求めた。

二、当事者双方の主張と証拠の関係は、証拠として、控訴人らが、当審証人岡島米蔵の証言を援用し、後記乙号各証の成立を認め、被控訴人が、乙第一七号証、第一八ないし二〇号証の各一、二を提出したほかは、原判決事実摘示と同一であるのでこれを引用する。

理由

一、当時者双方の主張に対する当裁判所の判断は、原判決理由に認定、説示されているところと同一であるのでこれを引用する。

なお控訴人会社の第一地所に対する本件土地所有権の移転に伴う対価の点につき付言するに、

1  控訴人会社が、昭和四六年二月三日第一地所販売から本件土地を買受けた(第一次売買という。)ことは、成立に争いのない甲第五号証、乙第一、二号証、原本の存在と成立に争いのない同第三号証及び証人岡島米蔵の原・当審証言により明らかであり、また控訴人会社が、昭和四八年七月二日第一地所に対しこれを売渡した。(第二次売買という。)ことは、当事者間に争いがない。そして右の各証拠及び成立に争いのない乙第一一ないし一四号証によると、第一地所販売は、第一次売買の当時本件土地を含む周辺一帯の山林を、開発許可を得て住宅用地に宅地造成のうえ、これを他に販売する事業を行なつていたところ、事業資金に不足を生じたので、その事業遂行上不可欠であつた本件土地を担保として金融を得る目的のもとに、再売買を予約したうえで第一売買を結び、またその予約完結権の行使による再売買として、第二次売買がなされたが、ただその買主は、第一地所及び第一地所販売の代表取締役を兼務していた岡島米蔵と控訴人会社の代表取締役であつた控訴人濱口との合意によつて第一地所に変更されたことがそれぞれ認められる。

2  もつとも成立に争いのない甲第三、四号証、原本の存在と成立に争いのない乙第四号証、第八号証の二によると、控訴人会社が第一地所との間で、本件土地を同社が工場用地に宅地造成する特約のもとに代金一億二一五〇万円で買受けるという趣旨の契約書並びに同社に右特約についての債務不履行があつたことを前提として、右契約を合意解除のうえ、同社が控訴人会社に対し受領ずみの売買代金内金の返還と右債務不履行による損害賠償として金一億三九〇万六八〇〇円の支払義務あることを承認するという趣旨の契約書(前記乙第八号証の二のうち、「4300+6075=10375」

とある記載は、この契約書上の金額を試算するための計算式と認められる。)をそれぞれ作成したことが認められるけれども、前記第五号証、乙第三号証、成立に争いのない甲第九号証、第一七号証及び証人宮本敏雄の原審証言によると、右の各契約書上の合意は、控訴人会社の課税負担の軽減をはかるため、控訴人濱口と岡島米蔵とが通謀仮装したものと認められ、この認定に反する証人岡島米蔵の原・当審証言及び控訴人会社代表者兼控訴人濱口本人の原審供述は、右の各証拠に照らして措信できないので、右の各契約書作成の事実(前記計算式記載の点を含む。)は、前示1の認定を左右するものではない。

3  前記甲第五号証、乙第三号証、成立に争いのない同第五号証の一ないし六 第六号証の一ないし四、第七号証、原本の存在と成立に争いのない甲第八号証の二、その官署作成部分につき成立に争いがなく、その余の部分につき証人宮本敏雄の原審証言により成立の真正を認める同第一六号証及び右証言並びに前示1の認定事実を綜合すれば、控訴人会社は、第一売買において第一地所販売との間で、本件土地を同社が住宅用地に宅地造成する特約のもとに代金六〇七五万円で買受ける旨を契約するとともに、同社が控訴人会社に対して昭和四七年一二月三一日までに再売買の代金として金一億五三〇〇万円を、または昭和四八年六月三〇日までに右代金とこれに対する昭和四八年一月一日以後日歩金八銭二厘の割合による遅延損害金を提供して予約完結の意思表示をしたときは再売買の効力を生ずる旨を予約したこと、そして右予約完結権の行使にもとづき、かつその買主を変更する前記合意により、控訴人と第一地所との間に第二次売買が成立したが、その代金は、その際の交渉により右予約の条項に従つて算定したところを多少減額して金一億六六九〇万六八〇〇円と約定され、先に引用した原判決理由第三項(4)記載のとおり、現金及び小切手によりその代金が支払われたことがそれぞれ認められ、証人岡島米蔵の原・当審証言及び控訴人会社代表者兼控訴人濱口本人の原審供述中右認定に反する部分は、前記各証拠に照らして措信できない。

二、以上によれば、控訴人らの本訴請求はいずれも理由がなく、これを棄却した原判決は相当であるので、民事訴訟法三八四条、九五条、八九条、行政事件訴訟法七条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小西勝 裁判官 潮久郎 裁判官 藤井一男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例